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両親の話

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両親の話

家の中の様々なバリア

今では様々な高齢者用の施設があり、昔と比べ、選択肢が増えていますが、それでも高齢者の住まいとして一番多いのが「自宅」です。今でも約9割の高齢者が自宅に住んでいるのが現状です。要介護でも8割が自宅です。

しかし年齢も80を超えてくると、体の機能が落ちてきて、今まで出来ていた事が出来なくなってきます。

私の両親は二人とも要介護ですが、それぞれ状態が違います。

母親の方は認知症がひどく、5分も経つと今までの出来事を忘れてしまいます。言ったこと、やったこと全て忘れるので、何度も同じことを繰り返します。また、自分の歳が分からなくなり、夕方になると「自分の家に帰る」と言って、徘徊を始め、平気で3kmくらい歩いて行ってしまいます。脚は丈夫なんですね。

逆に父親の方は脚が弱ってきました。歩いていても脚が前に出なくなり、転んでしまいます。転ぶと一人で起き上がれません。一度、よせばいいのに友人のところまで歩いて行き、道路に転んで動けなくなり、通りがかった人に脳梗塞か何かと勘違いされ、病院まで運ばれた事もありました。

私はそんな両親と2世帯住宅で一緒に暮らしています。

だんだん状態がひどくなる両親を見て、まず最初に行ったのは玄関に縦手すりを付けることでした。靴を履く時にバランスを崩さないようにするためです。次に玄関ポーチにも手すりを付けました。父親が玄関先で派手に転んだ事があったためです。今のところ、廊下やトイレにはまだ手すりはつけていませんが、そろそろ必要かもしれません。

母親の方ですが、徘徊対策をどうするか悩みました。玄関から出られないように、玄関ドアに通常の鍵とは別にもうひとつ鍵をつけようかとも思いましたが、そもそも勝手口からも窓からも出られるので却下となりました。

次に考えたのが玄関ポーチの先にアコーディオンを取り付ける事でした。しかしここも鍵をつけないと普通に開けられてしまいます。逆に鍵を閉めると来客が玄関にあるインターホンを押せません。郵便物も宅急便も受け取れない。

そして最終的に、木を1本抜いて郵便受けの位置を変え、アコーディオンにダイヤル式の鍵をつけるという事にしました。完璧ではありませんが苦肉の策です。関係者にはダイヤルの番号を教え、開けられるようにしました。

しかし、今度は裏に回って裏口から出るようになってしまいました。しょうがないので裏口にも鍵を付け、出られなくしました。すると今度は反対側の隣の家との隙間から出てしまいます。ここは隣地との間に高低差があって、フェンスを付けたりするのが出来ない場所でした。困った挙句、ホームセンターで材料を買ってきて、手作りで柵を作ることにしました。

これで出られないだろう、と思っていると、先に付けたアコーディオンと手すりの隙間を無理やりに跨いで出て行ってしまいます。

「帰りたい!」という気持ちがこんなにも強いものなのか、と思う反面、出て行かれてもみんな困るので、仕方がないのでこちらも手作りでフェンスを取り付け、ようやく出られなくなりました。

その後…。

アコーディオンの前でフェンスを揺すったり、無理やり跨ごうとして出たがっている母親を見て、可哀想な気持ちになり、「これで本当に良かったんだろうか?」と、なんだか自責の念に駆られるようになってしまいました。

今、母親は「特別養護老人ホーム」に入っています。普段なら面会もできますが、今はコロナでできません。心配事はなくなりましたが、切なさが残りました。

みなさん、親孝行はできる時にやってあげて下さいね。

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